水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

テレビがネットより優れているトコロ または15万件の苦情に見るネットの可能性

昨日、ウチからテレビが無くなりました。もちろんブラウン管式の受像機は今も部屋に鎮座ましましており、消えたのはアナログ放送のコンテンツです。深夜のバラエティー番組が好きな私がいつまでテレビ無し生活に耐えられるか試しつつ、何故私はネットに満足せずテレビを欲するのか、砂嵐の画面を見ながら考えてみました。

テレビがネットより優れているトコロ。それは「テレビは私の怠惰を許してくれる」事でしょう。
ネットには無限のコンテンツがあり、意思をもって何か調べたい時にはテレビには不可能な事を可能にしてくれてとても便利です。が、ただ退屈をしのぎたい時にも、何を見るか自分で考えて、検索して、選ばなければなりません。これが面倒です。苦痛です。
テレビは私に何も要求しません。ただスイッチを入れれば、勝手に一方的にコンテンツを垂れ流してきます。この怠惰、この愚鈍への寛容、この安逸がテレビの素晴らしさです。またコンテンツの少なさも長所です。私のようにCSもBSもCATVも契約していない人間にとって、局の選択肢は(東京圏に暮らしていて)7つ程度。ザッピングすれば、あっというまに全部を一周できます。その中から選ぶだけでいい。怠惰な人間にとっては、このチャンネルが5以上10以下程度と言うのが最適な選択肢数ではないかと思います。例えば靴を買う時はABC-MART程度の品揃えが適度で、あまりに豊富な商品があるとどれを買えばいいか迷ってしまうのと同じです。
今日、試しにGyaoというサイトに行ってみました。「映画」「音楽」「お笑い」などの部門をまず選び、そこで表示される「ランキング」だの「お勧め」だの大量の候補からどれかを選ばないといけません。面倒くさい!。ザッピングも出来ません。一旦コンテンツ再生開始後に「他にどんなのあるかな〜」と思って何気なくその辺をクリックすると、今見ていたコンテンツが消えてしまいました。テレビならチャンネル戻せば、こちらの行為に関係なく淡々と続きが放送されています。ザッピング中のシーンを見逃すことになりますが、別に真剣に見ている訳ではなく退屈しのぎなのでそれで問題ありません。適宜CMが入り、トイレに行くタイミングまで指定してくれます。
Gyaoには「全話&続きを見る」なんている選択肢もあり、そうなるとやはり一話から見たほうがいいのか?という迷いが生じます。テレビなら勝手に先週は先週分を、今週は今週分を放送しており、それを受容するしかありません。今放送されている分を見るしかない、あきらめるしかないことが怠惰なのに、それをネットは許してくれません。
たまたまテレビをつけたらた「さまぁ〜ず×さまぁ〜ず」や「おねだりマスカットDX!」をしているから見るのであって、わざわざ探して見るのは退屈しのぎの邪道です。

総務省とNHK、民放各局は25日午前、地上デジタル放送(地デジ)への完全移行に伴う問い合わせや苦情の電話が、アナログ放送での通常番組が終了した24日正午から約15万件にのぼったと発表した。

http://www.asahi.com/national/update/0725/TKY201107250208.html

地上波テレビのアナログ放送が終了した24日、家電量販店は、地上デジタル対応のテレビやアンテナを買い求める客でにぎわった。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/news/20110724-OYT8T00737.htm

こうした人達の中には状況を理解していない高齢者もいるでしょうが、その多くは、知っていて対応をサボってきた人でしょう。テレビ無しのまま放置と言う私を含めて、皆、怠惰で愚鈍な人達です。そして、苦情を言ってくる&家電量販店に駆けつけるということは、そういう人ほどテレビを必要としていると言う事です。ネットではダメなんです。

以前BLOGで、ただボタンをポチポチするだけのグリーやモバゲーの売上がいつのまにかWiiやPS3といったパッケージソフトを越えていた驚異について書きました。また、ただイスに座ってレバーを傾けているだけのパチンコ産業が(貸し玉料として)20兆円規模あります。そして、アナログ放送が終了するまで対応せず、画面が消えて慌てて店に押し寄せる人達が大勢います。
「怠惰」は巨大な市場なのです。そして、ネットはまだユーザーに自助努力を要求し過ぎで怠惰に十分対応していません。ここにネットの更なる可能性、市場拡大の余地が見えます。
ネットで不足しているのは、これ以上もっとコンテンツを増やしたりユーザーの自由を増やす事でなく、その逆。もっとユーザーの手を縛り、お仕着せ、押しつける仕様の不足だと思います。
既に怠惰をカバーしてくれているものもあります。例えば私は2ちゃんねるを殆ど見ませんが、2ちゃんのまとめサイトは良く見ます。無数のスレッドから面白そうなのを探し出すなんてウンザリですし、どうせROMるだけで書き込んだりしません。まとめサイトに行けば、親切な管理人さんが勝手に良スレを選び、カキコミをピックアップして短くまとめてくれています。私は、無数のスレから自分に最適なものを選ぶ自由を放棄するかわりに、何も努力せずそこに並んでいるセレクトを読む怠惰を手に入れます。退屈しのぎとしてはそれで十分楽しめます。これってまさにテレビ局が番組編成して、編集して、たまたまテレビつけた時に放送されている番組を見るのと同じです。

Gyaoやニコ動やYoutubeから適当なコンテンツを選んで、勝手に流しっぱなしにしてくれたら、テレビいらなくなるのになぁと思います。