水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

ロシアが提供するポルノの社会実験

先月、9月16日付でNewsweek日本版にこんな記事が出ていました。

www.newsweekjapan.jp

記事の一部を引用すると、

ロシア政府は今週、人気ポルノサイト「YouPorn」や「PornHub」など11のポルノサイトへのアクセスを禁止した。子どもたちの健全な成長に有害だという理由からだ。 

その後どうなったのか、この政策がどのような影響を生んでいるのか知りたいです。

世の中には、ポルノが性犯罪を助長していると主張する人がいます。その意見によれば、ポルノを見ることで人は性欲を刺激され、よからぬ欲望を掻き立てられ妄想を膨らませ、その結果、性犯罪に走るのだと。
一方、それと真逆の意見もあります。ポルノは性犯罪を抑制している。それは、人はポルノを見ることで、よからぬ欲望を満たし、妄想を発散させて性欲を鎮め、結果として性犯罪をしなくなるのだと。
ロシアの政策は、どちらの意見が正しいのかをテストする社会実験です。

ポルノの影響は通常は分かりにくいものです。例えば日本とアメリカではポルノ規制に差がありますが、社会に様々な違いがあるので両国の性犯罪を比べても、それがポルノ規制の差による結果なのか判別できません。一つの国で突如ポルノ規制が変化すると、(それ以外の経済・社会状況は同時には変わらないので)ポルノ規制の影響だけを抽出できます。

先述の記事にこう書かれています。

 別のネットユーザーは、「『PornHub』の代わりに政府は何を提供してくれるんだ?」とツイートしたところ、連邦通信局から「ポルノサイトの代わりは『現実』で見つけろ」と叱られたという。

この発言は微妙です。当局はスクリーンの中でなく現実社会で「恋人」を見つけろと言いたかったのでしょうが、もしかすると結果は、スクリーンの中でなく現実社会に「性犯罪の被害者」を生み出すことにもなるかもしれません。
政策発動から一ヵ月。ロシアの性犯罪は増えたのでしょうか? 減ったのでしょうか?

あるいは、三番目の可能性は「特に変わらなかった」です。

もし性犯罪に有意差が生じなかった場合、それは良くも悪くもポルノに現実の犯罪への影響力がないのかもしれないし、あるいは、ポルノサイトは無数にあるのでたかが11サイトを遮断した程度では供給量に変化がなく社会実験になっていなかったか、です。

最後のパターンはつまらないので、できれば11箇所だけでなく徹底的にあらゆるポルノサイトを遮断してみて欲しい。その時に何が起きるのか? 普通の国ではそうした突然のルール変更は困難ですが、ロシアならプーチン大統領の指先一つで何でもできるはず。

ポルノは善か悪か。2016年9月以前と以降の犯罪統計を比べることで、ポルノは禁止すべき有害物か、下品だけれど社会の安全に貢献している有益物かが明らかになります。これは世界にとって必要な情報なので、是非結果を公開してもらいたいと思います。